pierrot
差別。 いつも、いつも、どこに居ても付き纏う、ひどく億劫な、けれど人間として社会で生きていく上ではある程度耐性を持たなければならない憎たらしいモノ。 現在高校二年生の若輩者である私も、それは常々意識している。 社会人のお兄さんやお姉さんは軽い気持ちで「学生時代に戻りたい」なんて口にするけれど、私はそれを聞くとちょっとむっとしてしまう。学生だって、楽じゃない。勉強だけじゃなくてスポーツも強制的にやらされるし、中学・高校では多くの場合、生徒自身では授業が選べない。身なりにだって規制がある。受験という名の戦争にだって時には参加する。否、日々戦争だ。 それで、――もっと私みたいなのが通うより上の、偏差値の高い学校ではどうなのか知らないけれど、学生生活にはいじめが付き物だ。社会に出たってそうなんだろうけど、今はそれは置いといて。幸い高校に進学してから自分がその標的になることはないし、中学時代のようにあからさまな差別は今のところ見ていない。あっても、ちょっと気に食わない一部の生徒に対しての態度が素っ気無いとか、意地悪だとか、その程度だ。そして中学時代との大きな差異は、いじめられている本人に自覚が無いということ。つまりそれだけ標的になる人物というものは鈍くて、周りも勘付かれない程度に加減している。 うんざりする。 今日も今日とて、差別は私の傍らに泰然と居座っていて。 「ねえ、昨日日直だったよね。日誌出しに行った?」 「えっ、ああ、そうか」 一限の休み時間中、女子生徒に指摘を受けた隣席の男子生徒ががたがたっと机を揺らしながら立ち上がり、そして案の定椅子の足に爪先を引っ掛けて転びかけながら、ばたばたと慌しく教室を出て行った。あーあ。何も次の授業が体育って時に行かなくても。日誌は朝のST(ショートタイム)が始まる前に職員室に提出する決まりとなっている。だからもうどの道遅れているのだし、一限の休み時間に行こうが二限の休み時間に行こうが大して変わらない。このHR教室は女子が脱衣に使う場所なのに。 「行っちゃったー。体操服、どうするんだろうね」 先程男子生徒に意地悪く指摘した女子生徒がけらけらと機嫌よく笑いながら私の顔を見た。私も適当に微笑み返して、教室後方に備え付けられたロッカーの元に向かう彼女の後をくっついて行く。すると彼女は自分の分を手にした後で、別の棚から私の分の体操服と体育館シューズを取り出し、「はい」と天使のような可愛らしい微笑みを浮かべて私に手渡してくる。……これだから性質が悪い。 おかしいだろうか? 彼女が背を向けて先に自席へと向かった一瞬の隙を見計らって先程の男子生徒の棚から勝手に体操服を引っ張り出して(くそっ、なんて汚いロッカーなんだ! 何故こうも菓子の袋が大量に詰まっている!?)急いで廊下に放り投げる、私は。因みに私が彼の棚の位置を知っている理由は単純明快、私の棚の丁度左隣であるためで、他意は無い。……よし、後はもう通行人に踏まれても知らぬ。 「うん、だからさ、体操服がみんなに踏まれまくってすげー汚れた」 「俺、足跡だらけのお前見てリンチにでも遭ったのかと思ったぞ」 「んなわけねーだろ」 その後、昼休みに隣席の男子生徒とその友人のこんな内容の会話が聞こえてきても、私は当然何もかも知らない素振りで目の前の友人の話に耳を傾け、微笑む。 何故体操服を入れる袋を持たない男子が多いのだろうか、なんて、ちょっと不思議に思ったりしつつだ。 ●●● 本日も特にこれといった事件が発生するでもなく、退屈で穏やかな授業時間が終わりを告げた。私はさっさと帰宅の準備を整える。帰宅部なのだ。 「ねえ早くプリント回してよ」 「っあ、ああ、ごめん」 帰りのST中、隣席からそんな言葉が聞こえてきた。例の、軽くいじめに遭ってるっぽい男子生徒と、そのすぐ後ろの席の生徒の会話だった。まあ確かに後ろに回す前に自分の分のプリントを読み始めるのは、私もどうかと思うが。 「わっ」 プリントに書かれた「進路希望調査票」という文字をぼうっと見つめていたら、隣からそんな情けない声が飛んできた。私は小さく嘆息する。隣席のいじめに遭ってるっぽい男子生徒が後方からのイラついた催促に余程慌てたのか、プリントをとり落としてしまったのだ。……いや、ぶちまけたというべきなのか。器用なヤツめ。 何かを思うより先に体は動いて、私の手は散らばったプリントの一枚を拾い上げていた。私が取った方が早いような位置にまで飛んできたものがあったのだ。見ると男子生徒は爪が短い所為なのか単に不器用なのか気が動転しているためなのか知らないが、まだ全部のプリントを収集できないでいる。その男子生徒のためというよりは後ろの席の人達がやきもきしているだろうという単純な理由から、私は椅子から降りて床にしゃがみ込み、プリントを拾い集めた。私がやった方が断然早いな。うん、それだけ。 「ん」 全部拾い終えたところで無愛想にプリントの束を突き出したけど、中々受け取ってもらえなかった。 ちょっと、何なの。 そのため視線を合わす予定ではなかったのに、つい顔を上げてしっかりと男子生徒の顔を見てしまった。おしゃれってわけじゃなく伸ばし放題にしてるだけって感じで無駄に髪が長いから不潔に見えるんだと思う。しかもぱさついたこの髪は頭から灰をかぶったような奇妙な色合いをしている。これはいただけない。真面目くんなくせに校則違反の長さで、特に前髪なんか目に入りそうだ。いや、多分もう入っているなこれは。そんなふうに視界が悪いから、色んなことに気付けないんじゃないの? 去年も同じクラスだったけれど、彼の顔をしっかり見たのはこの時が初めてだった。意外や意外、目鼻立ちがはっきりとしていて、睫毛が長い。痘痕っぽいけど中々に綺麗な顔をしている。ふーん。 等等、どうでも良い感想を抱いている私を、彼は呆然とした表情で見つめていた。 だからさ、何なの? 「ん」 再度プリントの束を押し付ける。相変わらず反応が無いのにむかっとして私は無理矢理彼の手を奪い、強制的にプリントの束を握らせた。まったくどこまでも世話の焼ける。 すると、はっとしたように彼が口を開いて。 「っあ、あ、ありがとう!」 「うわあ……」 教室中に響くんじゃないかってくらい大きな声でお礼を言われ、私は若干、いやかなり引いた。もうほんとお礼とかどうでもいいから、早く後ろの方々にプリントを。 頬を引き攣らせ、動悸のする胸を宥めつつ、私は席に戻った。 しかし、思った。 鈍いけど、ちゃんとお礼の言える良いヤツじゃん、と。 鈍いといえば私だって結構鈍いし。ヤツと大して変わらないのに。 なんで、ヤツだけが。 ……やめよう、こんなことを考えるのはらしくない。頭が、それ以上に胸の奥が、痛くなる。 担任の進路に関するかったるい話さえ終われば、後は帰路を辿るだけだった。 ●●● 「あの、く、黒田さん」 昇降口で革靴に履き替えようとしていたまさにその時、背後から遠慮がちに声がかけられた。この声ってまさかと思いつつ振り向くと、居た。例の隣席のいじめられっ子くんが。 「…………」 彼の存在を綺麗さっぱり完全に無視し、私はスリッパを靴箱に突っ込んでこの頃ぼろくなってきた革靴に履き替えた。うちの学校、最寄りの駅までの距離が結構あるんだよね。 「あの、く、黒田さん」 無視されたのを自分の呼びかけが聞こえなかったためと判断したのか、いじめられっ子くんが再度同じように呼びかけてきた。どもり具合まで一緒で、ちょっと笑える。 仕方ないと振り返ったら結構な至近距離に彼の顔があり、私はぎょっと身を引く。おいおい君、もうちょっと他人、しかも男子が近付いて許される距離というものを考えたまえ、無神経だぞ。……ああ今更か。 「なに?」 思わず眉を顰めつつ無愛想に尋ねたら、彼が何やらその場でがさごそと肩に掛けていた鞄の中を漁り出した。片足で鞄の底を支えた危うい体勢だ。嫌な予感がしたが、案の定というか……次の瞬間彼は体勢を崩し、肩掛けの片方の紐がするっと抜けたために鞄の口が大きく開いて、中身がいくらか下に落ちた。ほぼ全部私が拾い上げる。本当にもう、なんていうか。言葉が出ない。 「あ、ありがとう」 「いーえ。で何の御用でしょーか?」 「あの、日誌を……」 日誌? はにかむような笑みを浮かべた彼はそう言うと先程鞄の中から飛び出し、そして元通り鞄の中に詰め込んだはずのそれを取り出した。二度手間な。 「俺の次、黒田さんだよね。十四番」 「あ、うん……そうだね」 差し出されたそれを驚きつつ受け取った。彼のことだから他の荷物と一緒に鞄に入れてそのまま忘れて帰ってしまいそうなものなのに。あと、私の出席番号を覚えているところとか。去年私と一つ違いの出席番号だった人はいつまでも覚えてくれなくて、朝礼の度に並び順を尋ねてきたものだけれど。 日誌は朝、STが始まる前に担任が受け取って、帰りまでにその内容を確認する。で、そのまま直接次の当番の生徒に手渡すこともあれば、前の当番の者に渡して生徒同士での連絡を図らせたりもする。この辺りはテキトーだ。 少し面倒に思いつつ私も鞄の口を開け、分厚い日誌を教科書と教科書の間に捻じ込んだ。元々膨らんでいた鞄がさらに太る。毎度のことながら、重い。 「黒田さん、あの」 まだ何かあるというのだろうか。 もう用は済んだとばかりに歩き出していた私の後ろに彼が着いてきた。ストーキングか? 返事を返さずに進んでいると、彼が突然行く手に現れてぎょっとする。お、お前、いい加減にしろよ。立腹を華麗に通り越してちょっと脱力してしまうぞ。 「今日は、ありがとう」 「はあ……」 思わず曖昧な声が出る。帰りのST中にプリント拾いを手伝ったことについてだったら、既にお礼を言われたはずだ。しかも、かなりでかい声で。 釈然としないまま歩み続けるが、彼はまだ着いてくる。いや、そりゃ校門を出るまでは皆同じ方向に進むのだし、私が気にしすぎなのかもしれない。 「黒田さん」 いや気のせいじゃない、彼は確実に私を追ってきている。 またしても眉間に皺を寄せつつ彼の方を見る。いや、睨む。日の光に照らされた彼は教室にいる時とはなんだか少し違って見えた。鼠色の髪は光を拒むのか、全く変化が無かったけれど。 「ねえ、これ。これのことだよ」 そう言って彼が掲げたものを目に止めた瞬間、私の歩みも止まった。 体側服。 を、入れる袋だ。 それも私の。 「え……」 「机の横に引っかかったままだったから、持ってきた」 今日は金曜日、体側服を家に持ち帰る日だ。土日の間に洗わねばならない。 体育の後、ロッカーの中に仕舞わず机の横に引っ掛けたところまでは覚えていたが、その後持ち帰ることを忘れていたようだ。因みに彼が自分の私物を持っているのに気付けなかったのは、極力彼の姿を視界に入れないよう努めていたためである。 「……ありがとう」 素直にお礼を言って、体操服の袋を受け取る。また荷物が増えた……が、そんなことよりもだ。 彼、妙に気になるニュアンスのことを言っていなかったか。 「黒田さんでしょ」 「な、何がかな?」 私は思い切り顔を逸らして頭をぐしゃりと掻いた。なんか痒い。痒い痒い痒い。 「恍けないでよ。俺気付いてたよ、ほんとは。だからわざと黒田さんの席の近くで大きな声でその話してたのに、黒田さん何も言ってきてくれないし、だからお礼言うのが遅れちゃって」 おいおい私に話しかけられるのを女々しく待ってないで男らしく自分から切り出したらどうなのだ、とは突っ込めなかった。だって、だってさ。 ……気付いていたんだ。 複雑な思いで彼に視線を戻すと、不思議な微笑が返ってきた。どきまぎしてしまう、見たことのない微笑。見たことがない、というか、自分には向けられたことがない類の、っていうべきなのか。 「黒田さんは、優しいね」 ●●● おかしい。 絶対に、これはおかしい。 私はわりと社会通念、世間の一般常識とやらに忠実に生きている方だけれど、幾らか周りと異なる感覚も持っている。 例えば、私のクラスメイトの多くが楽しみにしている、席替え。私はそれに興味を示したためしがない。席順なんてどうでもいいし、正直席を動かすのが面倒だ。私のクラスでは担任の気紛れによるところが大きいけれど、大体一ヶ月に一度くらいのペースでそれが行われる。必要ないとすら思う。否、思っていた。 それが、今。 非常に、非常に、席替えしたい気分になっているのだ。 原因は、――ああ、ご察しの通り。 「黒田さん、黒田さん」 この頃頻繁に声をかけてくるようになった、隣席の彼。 ……何故だ。 人生、わからぬものである。 ●●● 「黒田さん」 ある朝自席に着いたところで隣席の彼に声をかけられたが、いつものごとく無視をした。 そうしたら、むに、と頬に指先を埋め込まれ。 「可愛いね」 などという爆弾発言を投下されたので、私は一瞬硬直した後、「………………はあ!?」と盛大に絶叫した。いきなり何なのだ! 「それ」 「どれ!」 「それ、頭につけてるやつ。えっと……」 カチューシャのことか……。 本当にほんのちょっとした気紛れでしてみただけなのに、そんなふうに指摘されたら動揺する。こんなの、友人同士のちょっとした話題作りのつもりでしかなかったのに。 苛々しながらカチューシャを外し、「あ」と声を上げた隣席の彼を尻目に急いで女子トイレまでダッシュした。鏡の前で手櫛で簡単に髪を整える。ああもう、何なの。何なの! むかつく。 大体私、不細工なのに。何をしたって可愛くないのに。 いやその前に気安く触るんじゃない。 今度は急に気分が地の底まで下降して、がっくりと項垂れた。変なの。あれだ、一応お年頃だから、情緒が不安定なんだろう、きっと。 朝っぱらから不本意な徒労感に襲われつつ教室に戻ると何故か彼の姿は無く、かわりに友人の一人が登校していたので彼女の元へよろよろっと歩み寄った。 「ゆかちゃん、おはよう……」 「おはよー。……どうしたの?」 友人が私の疲れた表情と手に握ったカチューシャとを見比べて、不思議そうな顔をする。 「何でもないッス」 「そう? ならいいけど……」 当分の間イメチェンはしない、と決意した今日この頃だ。 ●●● こんな生活がいつまで続くのだろう、と気が遠くなりかけていた。 私の大嫌いな夏が終わり、過ごしやすい季節になった。秋だ。 何故なのかくだんの彼に懐かれるようになってから、丸一月が経とうとしている。 先日席替えをして窓際の席になった私は、日差しに目を細めつつ窓の外の景色を眺めていた。四階だから、結構遠くまで見渡せる。隣の背の低い図書館の屋上なんかもよく見えて、雨上がりの日には水溜りに集まる野鳥の姿なんかが観察できたりする。案外楽しいものだ。 「黒田さん」 このように邪魔さえ入らなければ。 「ねえ黒田さん」 当然、私は無視する。何故か席替え後もこの彼と隣になってしまった私は、運が無さ過ぎると思う。 「次、移動教室だよ」 「……え」 そう言われて周囲を見回すと私と彼以外は誰も居なかった。うわー二人きりとか最悪なんだけど。神様、これはない。気を遣ってくれたところなら申し訳ないけれど見当違いだ、もっと他の、本当に二人きりになりたいと思っている男女を二人きりにしてあげて欲しい。などと余計な考えを巡らせつつ移動の準備をする。教科書とノートとファイルと……。 「円さん」 突然自分の名前が聞こえたので私は動きを止め、何度か瞬いた。一応動揺しているところなのだ。 「誰もいないね」 だから何だというのか。 「こっち見てよ」 「…………」 私は普段彼に声をかけられても無視するが、それ以上に彼の姿を視界に入れないよう努めている。名前を呼んだこともない。 それとは真逆に彼は痛いほど視線を向けてくるし、今みたいに下の名前で(勝手に)呼んでくる時もある。 だから何、ということはないけれど。 雑念を振り払い、勉強用具を机の中から引っ張り出す。教科書とノートとファイルと、資料集と問題集と筆箱。結構な重量感。一教科でこれだけの量だと、やはりどうしても総合的に荷が嵩んでくる。大体、 「怒っているね」 「…………」 大体、資料集とか授業で全然使わないのに何故買わせるんだろう。オールカラーでかなり値段も張るし、家で見ろなんて言われたって余程興味のある教科でもない限りは見ないよね。とりあえず、私は見ない。 立ち上がって黒板横に引っ掛けられた鍵を手にした後、教室を出る。私のHRの鍵にはバスケットボールをモチーフにしたキーホルダーが付けられている。そういえば担任が学生時代にやっていたとか聞いたことがあるような、ないような。 がちっと鍵をかける音が、妙に廊下にこだました。 「それとも、泣いた?」 泣いてなどいない。 「サボる?」 サボらぬ。 「ねえ。俺の所為で避けられてるんでしょ」 何の話かわからないな。 「サボる?」 それさっきも聞いたじゃん。 意に介せずずかずかと廊下を進んだ。時間も無いので、かなりの早歩きで。大股で。 理科実験室に到着すると、突き刺さる視線の数々と態とこちらに聞こえるような声量で発せられた揶揄とが、痛かった。 ●●● 本当は、かなり初めの段階で気付いていたのだ。 私に親しく話しかけてくるようになってから、ヤツが豹変といってもいいくらいに変わっていたこと。 外見的に、という問題ではない。ヤツは相変わらずぼさっとした重たげな髪型をしているし、痘痕っぽいし。 だから、そうではなくて。 ●●● 「君が壊れたって知ったこっちゃないんだ。それよりも自分以外の奴と親しくしているところを見るのが辛い、耐えられない。だから道化を演じていたんだよ、気付いてた? 気付いてたんでしょ。君はいつだって自分の見たくないものは見て見ぬ振りをする、そういう人。ああ、でもねえ、君が初めて話しかけてくれたときは本当に嬉しかったんだ。一年以上かけて定着させたこのキャラが、漸く報われる時がきたんだから。ねえ、黒田さん。嫌いになった? それでもいいんだよ、気にしない、気にならないんだ。それよりももっと辛いのは――ああ、この話はもう何度もしたっけ。ね、俺しかいないでしょう、今君の世界には。君にはもう俺だけでしょ? だったらもう、」 落ちればいいじゃないか、地の底までもさ。 一人のピエロが私の耳元でそう囁いて、艶やかに微笑んだ。 (fin.) あまりにも救いがないので、以下、それまでの雰囲気をぶち壊す後日談を……。 じめっとしたまま終わりたくない人のみ反転でどうぞ。 ●●● 「家に帰れば父も母も姉も祖母も居ますが何か」 「俺の野望をぶち壊さないで」 「野望とかウケる」 「ウケるところおかしいって」 「よぉーし、大学は絶対コイツとは違うところへ行こう。こいつ内申悪いし、上の方狙っていけば大丈夫だな」 「じゃあ俺も上の方の大学に」 「俄然やる気になってきたああああ! むしろメラメラ燃えてきたあああああ!」 「………………」 黒田円は元気なようです。 site top/novels |